差し歯とは?
差し歯とは、虫歯や外傷などで「神経と大部分の歯冠を失った歯」に対して施される補綴方法の一つです。「歯の根っこが残っていること」が前提条件となり、歯の根っこの上に土台を立てて人工の歯(被せ物)をかぶせる治療です。基本的には保険適用となる治療ですが、被せ物や土台の素材によっては自費治療となることもあります。
差し歯の構造
差し歯の構造は主に3つの部分から成り立っています。まず、歯根という天然の部分があり、その上に土台(コア)が設置されます。コアは金属やファイバーなどで作られ、歯の強度を補強する役割を果たします。その上にかぶせられるのが人工の歯冠で、セラミックやレジンなど、多様な素材から選ばれます。これにより、歯の見た目と機能を回復します。
被せ物によって変わる差し歯治療の費用
差し歯治療の費用は、選択する素材や歯の状態によって異なります。保険診療が可能な場合、比較的低コストでの治療が受けられ、一般的に1本あたり3,000円から10,000円程度です。しかし、より審美性を重視する場合には、自由診療を選択することもあり、この場合、費用は80,000円から200,000円と幅広く設定されています。このように保険診療と自由診療によって、値段の幅が存在することが差し歯の特徴です。
■銀歯(金銀パラジウム合金):
費用:10,000円以内/1本(保険適用)
■ハイブリッドセラミック:
費用:10,000円程度/1本(保険適用の場合)
ハイブリッドセラミックは保険適用の場合(上下の第一小臼歯・第二小臼歯・第一大臼歯(真ん中の歯から4番目、5番目、6番目の歯)と上顎・下顎それぞれの前歯(中切歯、側切歯、犬歯)は保険適用となり1本10,000円程度ですが、それ以外の歯の場合は自費となります。自費の場合は40,000円~80,000円くらいが料金相場です。
■金歯:
費用:80,000円~150,000円程度/1本(自費)
■セラミック(ポーセレン):
費用:50,000円~100,000円程度/1本(自費)
セラミック(ポーセレン)は、いろいろあるセラミック系被せ物素材のなかで「最も天然歯に近い色味・透明度」の素材です。色味はいろいろあって白いものから黄色味が強いものまであります。歯根部から歯先に向けてグラデーションをかけることもできます。色味や形をどれだけこだわるかによって値段が大きく変わってきます。
セラミック(ポーセレン)は、色味・透明度が天然歯に一番近くて美しいものの、他のセラミック系素材と比べて強度が弱いという弱点もあります。2~3年使っているうちに結構な頻度で割れたりします。実用性を考えると次に説明するジルコニアのほうがお勧めかもしれません。
■ジルコニア:
費用:80,000円~200,000円程度/1本(自費)
ジルコニアは酸化ジルコニウム(ZrO₂)という素材でできたセラミックの一種です。多様な色味が再現できますが、透明度ではセラミック(ポーセレン)に劣ります。ジルコニアの一番の特長は「非常に硬くて強いこと」です。硬さは約1300MPaで、歯の硬さ(400MPa)の3倍以上、セラミックの硬さ(150MPa)の9倍程度という硬度を誇ります。
ジルコニアの費用もまた、ポーセレンと同じく色味や形をどれだけこだわるかによって値段が大きく変わる傾向があります。
■E-max(イーマックス):
費用:70,000円~140,000円程度/1本(自費)
E-maxもセラミック系素材の一種です。セラミック(ポーセレン)とジルコニアのちょうど真ん中のような性質を持っています。透明度はジルコニアより高いもののポーセレンには及ばず、強度はポーセレンより硬いもののジルコニアには劣る、という感じです。ただ、選べる色味の種類はジルコニアよりも少なめで、そのため人目につく前歯よりも奥歯によく使われます。
差し歯が適応となる症例
差し歯は、歯根がまだ健全な状態で残っている場合に適応となります。具体的には、深刻な虫歯や軽度の外傷により神経を失ったものの、歯根がしっかりと残っている症例です。この治療法は、外科的手術が必要なく、比較的短期間で完了するため、多くの患者さんにとって手軽な方法といえます。しかし、もし歯根が感染したり破損したりしている場合は、抜歯のうえでインプラントが検討される場合があります。
インプラントとは?
インプラントとは、歯周病や虫歯によって歯を失った際、その部分に人工の歯根を埋め込み、上部にセラミックなどの人工歯を装着する治療法です。この技術は、「歯が抜かれた場合」などに、失った歯を補うために主に利用されます。
インプラントの構造
インプラントの構造は大きく分けて3つの部分から成り立っています。まず、顎の骨に埋め込む「フィクスチャー」と呼ばれる人工の歯根です。これは通常、チタン製となっており、骨と結合する特性を備えています。このフィクスチャーの上に、「アバットメント」と呼ばれる接続部品が取り付けられ、最終的にその上に人工歯が設置されます。人工歯はセラミック系素材で作られることが一般的です(金歯や銀歯、プラスチック系素材を被せるという事例は聞いたことがありません。)。この3つのパーツからなるインプラントにより、天然の歯とほぼ変わらない使用感と見た目が得られます。
インプラントの費用
インプラント治療は自由診療であり、自費です。通常一本あたり30万円から45万円程度の費用がかかります。この値段には、人工歯根を埋め込む手術や、骨の状態に応じた追加の処置(足りない歯槽骨を造成する処置など)、そして被せ物の費用も含んだ料金相場です。
ただ…費用の表示方法はクリニックによって全く異なるため注意が必要です。総額で表示しているクリニックもありますが、「フィクスチャーの代金」のみを「インプラントの費用」としてホームページ等に掲載し、「被せ物代や骨造成、治療中に使う仮歯代は別料金」というクリニックもあります。安いと思ったら結局高額…ということも起こり得るため、事前のカウンセリングでしっかりと見積もりを確認することが大切です。
インプラントが適応となる症例
インプラントは、「歯根が完全に抜歯された場合」に適応される治療法です。すなわち、差し歯が適応となる症例でインプラントが適応になることはありません。
ただ、「抜歯した場合」に必ずインプラントが適応になるわけではありません。インプラント治療を受けるにはある程度の(顎の)骨量が必要であり、骨が十分でない場合は骨を増やす手術が必要になることもあります。
まとめ:差し歯とインプラントは「どちらかを選ぶ」というものではない
差し歯とインプラントとでは適応症例が異なります。差し歯は「根っこが残っている歯」に対する補綴方法であり、インプラントは「根っこも抜歯した」場合の補綴方法です。それゆえ、差し歯とインプラントは「どちらかを選ぶ」というものではありません。差し歯が適応となる症例でインプラントを選択することはできませんし、その逆もまたしかりです。
当院はインプラント専門医在籍クリニックです
当院はインプラント専門医が在籍するクリニックです。もし、抜歯して歯がなくなってしまったら…ぜひ当院にご相談ください。インプラント治療はもちろん、インプラント以外の補綴治療もご案内させていただきます。
加藤歯科クリニック
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加藤歯科クリニックは中村橋の一般歯科・小児歯科です。お口まわりのどんな症状・悩みも診療します。「急な痛み」や「被せ物の脱離」など、今すぐ処置が必要な患者様を予約なしで受け入れています。お困りの方はお電話ください。